「第1回戦略的パートナーシップシンポジウム報告書」発行
『サイエンスライターが科学について書くこと』:第二回国際広報勉強会が開催されました
研究者が提供する科学データを楽しいストーリーにして提供するためにはまずは下調べが重要であること、また相手との関係づくりが大切で、親しくなるといろいろな話が聞けるので、そこからストーリーが動き始めることを教えてくれました。下調べは自分で文献を調べるだけでなく、取材しようとしている研究室の学生などに予備的な質問をすることが有効であるとアドバイスしていました。そうすることで、時間が限られている研究者には大事な質問だけをすることができると語っていました。研究者との関係づくりで大切なのは、相手にとって役に立つ人間だと思ってもらうことで、そこから話が広がっていくとのことでした。
ネット全盛時代、米国では新聞が昔より読まれなくなりメディアの構造が大きく変化し誰もがライターになれるようになりました。そうした状況でも、理念を持ったジャーナリストは確固たる原則に則って記事を書いているので差別化が図れるとフリードマンさんは説明していました。情報の裏付けと透明性という、ジャーナリズムの理念を確保することで自分の価値を上げることができるからだそうです。また、情報の正確性と透明性を確保した上で、ストーリーを作り上げることが大切であるとフリードマンさんは語っていました。人間は誰でもストーリーに惹かれるようにできているからだそうです。
講演後に行われた質疑応答では、メディアにメールを読んでもらうためには目を引くようなタイトルをつけることが有効なことや、ネタ探しにはSNSが有効なこと、プレスリリース内には使い古された言葉を使わないようにすることなどを、ユーモアを交えて質問者にアドバイスしていました。また、適切な記者を選んでプレスリリースを出すのが有効であること、プレスリリースにエンバーゴ(掲載禁止期間)を設けることは、情報提供者とメディアの信頼関係が守られている限り双方に利益があること、どのようなプレスリリースでもやたらにエンバーゴを設けるのは有効ではないことを説明していました。参加者は研究者との関係づくりの大切さ、メディアに面白いストーリーを提供することの重要性を再認識することができ、大変有益な勉強会となりました。
学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点 第7回シンポジウム開催報告
「学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点」(以下、当拠点)とは、北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学のスーパーコンピュータを所有する8つの共同利用施設を構成拠点とし、東京大学情報基盤センターがその中核拠点を担う「ネットワーク型」の共同利用・共同研究拠点です。毎年度、共同研究の公募・採択を行い、当拠点との共同研究を実施しています。
今回のシンポジウムは、平成26年度に実施された公募型共同研究34課題の口頭発表による最終報告および平成27年度公募型共同研究に採択された全35課題のポスター発表による研究内容紹介を実施しました。口頭発表、ポスター発表ともに、一般の参加者も交えた活発な質疑や意見交換が行われました。
シンポジウム初日には、中村 宏 総括拠点長(東京大学情報基盤センター長)による主催側挨拶と、榎本 剛 文部科学省研究振興局参事官(情報担当)の来賓挨拶がありました。それに続けて2日間にわたり、公募型共同研究が対象としている超大規模数値計算系応用分野、超大規模データ処理系応用分野、超大容量ネットワーク技術分野、超大規模情報システム関連研究分野およびこれらの分野にまたがる複合分野研究の研究成果発表および研究内容紹介が行われました。
閉会では、合田 憲人 共同研究課題審査委員長(国立情報学研究所 教授)からシンポジウム全体のサマリーを含めた挨拶があり、シンポジウムは盛会のうちに終了しました。
当シンポジウムのプログラム、平成26年度採択課題の最終報告書および平成27年度採択課題の発表ポスターは次のURLから参照可能です。
■学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点第7回シンポジウムホームページ
http://jhpcn-kyoten.itc.u-tokyo.ac.jp/sympo/7th
第6回UTokyo Research, on siteが医科学研究所で行われました
広報室長の鈴木真二教授のあいさつで始まったイベントの前半では、まずは医科学研究所所長の村上善則教授がプレゼンテーションをしました。村上所長は2017年に創立125周年および改組50周年の節目を迎える医科学研究所の簡単な歴史を振り返り、ヒトゲノム解析センターやバイオバンク・ジャパンの取り組みや、この4月に新しく設立されたゲノム医科学研究機構について紹介しながらヒトゲノム情報を蓄積する重要性を伝えていました。続いてヘルスインテリジェンスセンターの井元清哉教授が、ゲノム解析に数学の理論とスーパーコンピュータを活用することががん患者の予後を予測するのに有効であることを説明しました。最後に公共政策研究分野の武藤香織教授が、ヒトゲノム解析やデータ蓄積に従事する研究者の倫理意識を高めることの重要性および一般国民のバイオバンク・ジャパンに対する理解を促進する取り組みについて説明しました。質疑応答の時間には、参加者からゲノム解析の倫理意識の各国の違いにどう対応するのか、ヒトゲノム解析分野でどのように産学連携をすすめているのかなど多くの質問が参加者から寄せられていました。
続いて近代医科学記念館のカフェでコーヒーブレイクが行われ、プレゼンテーションとはまた違ったリラックスした雰囲気の中で、講演者と参加者が軽食を取りながら情報交換を行いました。各国の大使館関係者や海外メディアは、医科学研究所の研究に大きな関心を寄せており、新たな交流を目指して積極的に質問をしていました。
その後にイベント後半の医科学研究所の研究室を回るツアーが始まり、バイオバンク・ジャパンのDNA倉庫、血清倉庫、組織バンクそしてスーパーコンピュータShirokane3を見学しました。バイオバンク・ジャパンは疾病を持つ患者のゲノム情報を集積することで疾病予防や治療に役立てることを目的に設立されたプロジェクトで、関連施設では情報提供に同意した患者さんのDNAや血清などが最新設備を駆使して保存されている様子を見学することができました。
また、スーパーコンピュータShirokane3の見学では、Shirokane3の優れた性能(422 TFLOPS)とストレージ能力(高速ストレージ:12PiB、アーカイブディスク:1PiB+21PB)がゲノム解析に活用されていることの説明を受けました。人間1人の全ゲノム配列のデータは100ギガバイト以上となるため、優れたストレージ能力が必要とされるとのことでした。参加者はその高性能に感心しただけでなく、間接外気冷却システムという水の気化現象を利用して室内の空気の熱を外気に放出し空調の使用を抑えるエコの取り組みを、スパコンの室内とは思えないほど暑い室内で身をもって体験することになりました。イベント当日は晴天で外気温は29度近く、室内は汗ばむほどの温度(サーバーの排気はなんと36.5度)だったのですが、暑がる参加者をよそにShirokane3は何事もなく稼働していました。
普段は見ることのできない施設を見学できた参加者は、バイオバンク・ジャパンの詳細やスーパーコンピュータの今後の改良予定など様々な質問をしていました。医科学研究所の研究に対する関心の高さがうかがわれた半日でした。
平成27年度「東京大学安全の日」講演会 開催
大学院農学生命科学研究科のリサーチフェローが、八丈島にて潜水作業中に亡くなる事故が発生してから10年が経ちました。本学では事故の発生した7月4日を安全の日と定め、事故の記憶を風化させることなく、教育研究活動における安全衛生の向上、事故災害の発生防止、安全意識の向上、安全文化の定着に取り組むことを改めて決意する日とし、この時期に講演会を開催しています。
五神真総長による挨拶では、多様な構成員の協働による、全ての分野における安全確保の重要性について、改めて強調されました。
講演会の第1部では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 科学技術顧問を務められている岩本愛吉氏より「感染症はなぜ増えるか」と題して、感染症の成り立ちや現状について、人間社会の変化に沿ってお話しいただきました。
第2部では、「我が国の感染症の対応」というテーマで、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 上席調査役(感染症研究課長 兼任)の中嶋建介氏より、実際の写真を交えながら、今話題の感染症やそれに対する行政の取り組みについてご講演いただきました。また、本学保健・健康推進本部の柳元伸太郎氏より「東京大学における感染症の対応」というテーマで、大学における感染症対策について、過去の事例等に沿ってお話をいただきました。
本年は学内外から約240名の参加をいただきました。ご来場ありがとうございました。
第3回リヨンー東京数学シンポジウムが開催されました
標記のシンポジウムは、これに引き続く3回目のもので、6月24日・25日に双方から4つずつの講演およびポスターセッションを行いました。このシンポジウムの次の週には、ENS Lyonで数学を牽引してきた当研究科にもなじみの深いEtienne Ghys氏の60歳を記念する国際会議Geometries in Actionが開催され、多くの参加者はこちらにも参加して、数学とともにリヨンの夏を楽しむことが出来ました。今回はフランス側から多大な援助を受けたことをここに記し、感謝したいと存じます。
高校生のための東京大学オープンキャンパス2015 開催
参加者は、各学部等の模擬講義や研究室見学等を通じて、本学の教育・研究活動を体験しました。また、現役学生による東大ガイダンス、キャンパスツアー、女子学生コース等の企画も盛況でした。
第10回研究所ネットワーク国際シンポジウム参加報告
研究所ネットワーク国際シンポジウムは、国立大学附置研究所の取り組み及び研究成果を明確に社会へ発信し、より一層社会への貢献に資することを目的として、11の生命系附置研究所が連合して開催する、新しい試みの国際シンポジウムです。
これまで各々の研究所単独ではなし得なかった新たな学問領域の創造、大規模な産学官連携及び人材養成を可能にする有機的な附置研究所間ネットワークを形成する礎となるもので、2005年より毎年1回開催しています。
今年は北海道大学遺伝子病制御研究所の主催で“Towards the Next Generation Research for Cancer and Immunology”というテーマのもとに開催されました。
初日の夕刻には意見交換会も開催され、各研究所の代表やシンポジスト・若手研究者が親睦を深めました。また、本学医科学研究所の倉島洋介助教が"Tissue-Specific Mast Cell-Fibroblast Network for Tissue Homeostasis"という演題で発表し、Young Investigator Awardを受賞しました。
ケネディ駐日大使とゴッテモラー米国務次官が東大を訪問しました
最初に登壇したケネディ駐日大使は、父・故ケネディ元大統領の科学発展への貢献の功績に触れながら、現在の国際社会にとって最も重要なのは「諸問題を解決するために、科学的知識を向上させ、より多くの革新的な技術や政策を生み出すこと」だと話を始めました。そして、そのためにはほぼすべての分野でSTEM教育が不可欠であることを強調しました。さらに、各国が協調して物事に取り組む必要のあるグローバル化の現代においては、一国だけでは大きな問題は解決できないこと、各国が協調して問題の解決に当たらなくてはならないことを訴えました。そして、討論会に参加した学生たちに、東大で受けている世界第一級の教育を活かして、STEM関連分野で革新を起こしてほしいと語りかけました。ケネディ駐日大使は最後に、学生たちに日米の研究交流に積極的に参加するように要請し、こうした交流は「アジア太平洋地域、さらには世界の平和と発展の大きな礎となっている」日米同盟をさらに強化することになると述べました。

次に大島教授が登壇して、自身の次世代育成オフィス(ONG)室長としての仕事を簡単に紹介しました。次世代育成オフィスは、小中高生を対象にSTEM教育を展開するために2011年に設立された、産学連携を重視した東京大学生産技術研究所の組織で、STEM教育のアウトリーチや教材開発を行っています。(生産技術研究所は、STEM教育および小中高生の科学分野への関心を高めることに熱心に取り組んでいます。)次世代育成オフィスでは、小中高生が科学や数学の知識を向上させること、さらには科学技術が日常生活に与える影響に対してより関心を持つことを目指しています。大島教授は日本が少子化などの重大な問題に直面している現在、将来のイノベーションのための人材開発が重要なことを訴えました。そのためにも、STEM教育、特に女子学生に対するSTEM教育が重要であると述べました。大島教授によると、日本の教育は暗記重視から生徒の知識力を深める方向へ転換しており、それに沿って2020年には入試改革が導入され、高校ではプロジェクト学習が施行され、2022年には文科省助成の数学と科学のリエゾンプログラムが導入されるそうです。大島教授は、日本のSTEM教育がこれから大きく変わっていくのが楽しみだと語っていました。

ゴッテモラー国務次官は女性支援政策という点に関して、米国では教育法の第9条(1972年改正)が女子学生のSTEM教育を推進していく上で大きな役割を果たしたことを述べました。スポーツにおける女子学生の差別を禁じたこの第9条は、女子学生に大きな変革をもたらしたそうです。ゴッテモラー国務次官は次のように語りました。「第9条は女子学生の考え方を変えていきました。彼女たちはまず、「これまで女子ができなかったスポーツをやりましょう」と考えるようになりました。そして次第に「女の子が化学の研究室にいて何が悪いの?」「私たちも微積分学を勉強すべきよ!」と考えるようになりました。女子学生はまずそれまで男子だけが許されていたスポーツに進出し、次第に科学、技術、工学、数学といった分野へ進出し始めていったのです。」
そして最後にケネディ大使が、この教育法第9条改正の提案者の1人が実は日系アメリカ人として初めての女性下院議員パッツイ・タケモト・ミンクだったことを討論会に参加した東大の学生たちに紹介し、「つまり、私たち米国政府はあなた方すべてに大きな期待を寄せているのです。」と学生を奨励して討論会の幕が閉じました。
(本イベントは、東京大学広報室・UTokyo Researchがコーディネートしたものです。)
*STEM教育とは、サイエンス(science)、テクノロジー(technology)、エンジニアリング(engineering)、数学(math)に重点を置いた教育のこと。
「Amgen Scholars Japan Symposium」が開催されました。
去る2015年8月1日(土)と2日(日)の2日間、本学福武ホールにおいてAmgen Scholars Japan Symposium が開催されました。
このシンポジウムは、米国アムジェン財団の寄附により、「世界の有名大学において、夏休み中に実施される研究室体験を通じ、次世代を担う研究者を育てる」という趣旨のもと、日本では今年初めて本学及び京都大学において実施されたAmgen Scholars Programの一環として、2つの大学でのプログラムに参加中の学生らが一堂に会し、開催されたものです。
* Amgen Scholars Program 記者発表については下記の記事をご参照ください。
(2014年11月25日掲載)
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/topics/topics_3298.html
初日には、本学国際本部長の古谷研理事・副学長及びアムジェン財団プレジデントのE.・セトリン氏による挨拶に続き、アムジェン米国本社バイスプレジデントのD・M・リース博士による基調講演が行われ、その後「A Global Health Challenge: “What Can the Scientists Do for the Future of Global Health?”」をテーマに、参加学生らによるポスター・セッションやラウンドテーブル・ディスカッションを行いました。
また2日目には、浅島誠日本学術振興会・理事(東京大学名誉教授)及び石川冬木京都大学大学院生命科学研究科長によるご講演のほか、学生らが前日のディスカッションの成果をグループ毎に発表したり、個人によるショート・スピーチを行ったりしました。そこでは、このAmgen Scholars Program が、日本での「異文化体験」や、日本の大学の研究室での活動を通じ、彼らに貴重な経験を与える機会となり、また新しい友情を育む場となったことなどを嬉しそうに話してくれました。
なお本プログラムは来年も開催の予定です。
参加申請方法などの詳細については、本年11月頃に大学ホームページなどでお知らせします。
平成27年度「文学部夏期特別プログラム」を実施しました
このプログラムは、本学及び東京近郊での博物館実習や文学部附属北海文化研究常呂実習施設(北海道北見市常呂町)での遺跡発掘体験等を通じて、本学の学部学生とセインズベリー日本藝術研究所が募った海外の学部学生が、異なる価値観に触れながら体験的に学ぶ機会を提供するものです。
昨年度第1回を実施し、第2回となる本年度のプログラムには、文学部と教養学部の学生4名、セインズベリー日本藝術研究所によって希望者多数から選考された、欧米大学の学生5名の計9名が参加しました。
8月1日(土)~8月7日(金)の7日間は、都内において歴史系博物館や美術館・史跡の見学を中心に実施した他、日本の文化体験として、下町文化が色濃く残っている「谷中、根津、千駄木」地区でグループ・ワークを行い、酷暑の中で初めてのかき氷に笑みがこぼれていました。
8月8日(土)~8月15日(土)の8日間は、北海道に渡り、常呂実習施設で2009年に調査を開始し、現在も調査を継続している大島2遺跡(北見市常呂町)での竪穴住居跡(11世紀頃)の発掘体験や勾玉の製作、土器の接合体験等の他、地域の方々との交流として、早朝ホタテ貝の養殖現場の見学も行いました。
発掘体験では、直径8m弱の竪穴住居跡を対象に当時の生活面まで掘り下げることを目標として作業を行いました。スコップを使い20cm程度の表土と、樹木の根を取り除くもので、掘り出した土と根の搬出、またスコップで掘るという体力と根気が必要な作業に、蚊などの害虫と暑さが加わり見た目以上に大変なものですが、参加した学生達は丹念に作業を行い、現場からは土器などの遺物も出土しました。また、プログラム最終日、修了を祝うかのように、常呂町で花火大会があり、常呂川で最後の夜を楽しみました。
このような様々な体験によって、本学とセインズベリー日本藝術研究所の学生との交流も深まり、非常に有意義なプログラムとなりました。
女子中高生進路支援イベント「宇宙ヲ覗クト?」を開催しました
参加者は5班に別れ、お互いに自己紹介をした後、大石理子(おおいしみちこ)ICRR助教による講義「宇宙線が生まれた場所を探して」を聴講しました。
講師とTA(Teaching Assistant)の大学院生と一緒に昼食をとった後、森谷友由希(もりたにゆうき)Kavli IPMU特任研究員による講義「ブラックホール?それともパルサー?ーガンマ線連星の正体に迫る」を聴講しました。続いて、パラボラ鏡を使った実験「鏡望遠鏡でステレオ観測!」に参加し、班別にその観測精度を競いました。
この間、保護者の方が講師に様々な質問をすることができる機会として、参加者の保護者を対象とした講師との懇談会を並行して実施しました。和やかな雰囲気の中、森谷研究員に加え、森井友子Kavli IPMU学術支援専門職員による、研究者や理系選択に関する質問への自身の経験を織り交ぜたいきいきとした回答を受け、参加した保護者の方々は女性の理系進学について非常にポジティブな印象を受けた様子でした。
記念撮影をした後、講師と院生、保護者を交えた懇談会を行いました。実験を経てすっかり交流を深めた参加者同士は、お菓子とお茶を飲みながら、講師やTAが中心となって盛り立てた宇宙についての会話を大いに満喫した様子でした。
多くの参加者は、プログラムをとても楽しみ、宇宙の多様さ面白さを改めて感じた様子が見受けられました。また講師や院生による実際の経験を交えた話を直接見聞することで、研究者としての生活へ期待を高めたようでした。
参考
カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の宇宙ヲ覗クト?紹介ページ
北京大学(戦略的パートナーシップ協定校)幹部職員研修の実施
北京大学は2013年から米国、シンガポールなどのトップ大学に幹部職員を派遣し、海外大学の組織、管理運営について学ぶ幹部人材育成を目的とした研修を実施しています。
今回の本学での研修では、戦略的パートナーシップ構築プロジェクトを推進する各部局長や担当教員との懇談会、国際本部の教員による国際戦略についての講演、本部及び部局の事務長による事務組織の説明、担当教員による学生サポート、キャンパスの安全衛生に関する講演などが行われ、受講者は、本学の組織や制度、管理運営についての知識を深め、活発な質疑応答も交わされました。
本学では、この度の北京大学の幹部職員研修を皮切りに、戦略的パートナーシップ相手校との間の特別な絆を活用した事務職員の交流を活発化させ、大学の一層のグローバル化を進めていきます。
戦略的パートナーシップの詳細についてはこちら
東京大学教職支援ネットワーク設立プレイベント開催報告
50名近い会員の方々(卒業・修了生、在学生、教職員)にご参加いただき、勝野正章 本学教育学研究科・教授、今村聡子 本学本部・経営支援担当部長、岡田直人 埼玉県立浦和高等学校・主幹教諭の3名による講演と参加者同士の交流会が行われました。大学教員、教育行政、現場の教師といったそれぞれの立場からの講演は参加者の関心も高く、多くの質問が寄せられました。交流会では4、5人でひとつのグループになり、自己紹介等をして交流を深めていただきました。
東京大学教職支援ネットワークは、本学を卒業・修了されて学校教育現場でご活躍なさっている方、教職を志す在学生、教職課程に携わる教員らが集う会です。本学の教職課程の発展に資する交流を行う場、また、会員のみなさまからのご意見を頂戴できる場を目指しております。ご興味がおあり方は、ホームページより会員登録の上、ぜひご参加ください。
大学院教育学研究科「発達保育実践政策学センター」を開設
去る8月22日には設立記念国際シンポジウムを開催し、「保育の質向上」をテーマに、田熊美保氏(OECD教育局シニア政策アナリスト)とEdward Melhuish氏(Oxford大学教授)にご講演いただきました。また、定期的に学術的なセミナー(研究会)を開催し、関連領域における最新の研究知見を学ぶ機会を設けています。
本年度は、まず日本の保育・幼児教育の実態を把握することを目的とし、全国の保育施設(幼稚園、保育園、認定子ども園、小規模保育所等)を対象にした大規模調査、ならびに全自治体の保育・幼児教育担当者を対象にした調査を実施しています。また、発達科学、保育実践、保育政策及び人材育成の研究拠点としての役割を果たすべく、「関連SEEDSプロジェクト」として13件の課題研究を採択しています。
今後は本年度の調査結果をベースに「保育施設-子ども-養育者」を対象にした縦断研究を行うことによって、子どもの育ちを支えるより良い環境とは何かを明らかにすることを目指して参ります。他にも、子どもの発達に関わるライフログを測定・把握するためのツールの開発や、保育に関わる人材育成や親支援のための教材等の開発も検討しています。
「発達保育実践政策学センター」設立記念国際シンポジウム開催報告
親子小石川ミュージアムラボ2015夏「カメン×ヘンシン→テンジヒン ――変身しよう、みんなの博物館」の開催(総合研究博物館小石川分館)
小学生とその保護者を対象に、「カメン×ヘンシン→テンジヒン――変身しよう、みんなの博物館」というタイトルで、常設展示の一部である民族学標本の仮面をテーマに、鑑賞・制作・展示・発表のすべてを体験できるワークショップを企画したもので、22日に5組、23日に7組の親子が参加しました。
ワークショップでは、はじめにギャラリートーク形式で、常設展示「建築博物誌/アーキテクトニカ」の近現代の有名建築や関東大震災以前の本郷キャンパスの建物の模型やモンゴルのゲル、そして二度の移築や改造を経て小石川分館として公開している旧東京医学校本館について、「仮面」や「変身」といった企画趣旨に合わせて解説し、「身体空間」の展示コーナーで、アンデス文明の石彫の拓本やフィジーやアフリカの仮面を中心に、「目に見えない」世界の存在を表現することとそのカタチについて紹介しました。また制作室に戻る際には、館内の各所に仮面をつけて変身した学生ヴォランティアが現れるというインスタレーションを行い、展示発表のイメージと身体をつかって表現した展示を加えることで展示室の印象も変身させるということをユニークな演出で伝えました。つづく制作時間では、仮面の土台となる材料を張り子・スチレンボード・片面段ボールから選び、親子でその材料をシェアすることを条件に、さまざまな素材を組み合わせた参加者全員のオリジナル仮面が完成しました。
そして、この企画のメインである展示発表は、館内全体を使ったもので、好きな場所を展示位置に選び、発表の際の変身ポーズも考えるという課題に取り組んでいただきました。最後に「変身!」のかけ声で展示になりきるという体験の後、作品についてのインタビューを行い、親子でポーズをとっていただきました。小学生の作品とそのストーリーに寄り添いカタチを共有した保護者の作品、いずれもすばらしく、表現豊かな親子の仮面が小石川分館の展示にその時だけ特別に加わりました。
このイベントを企画にした小石川分館学生ヴォランティアのメンバーは、ワークショップの開催を楽しみに二か月以上にわたって準備を進めてきました。それぞれの異なる研究分野や興味を持ち寄り、試行錯誤を重ねて小石川分館の展示や環境を生かした充実の内容となりました。そして何よりも参加者の方々のご協力のおかげで、和やかな雰囲気の中、開催することができました。皆様に心より御礼申し上げます。
※総合研究博物館ニュース「Ouroboros(ウロボロス)」に昨年開催分を掲載していますので、あわせてご覧ください。
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/ouroboros/v19n2/v19n2_sakai.html
広報誌「淡青」31号を発行しました
五神新体制、始動。
[東京大学を励起する]
「知の協創の世界拠点へ」――
です。
本年4月の就任以降、東京大学を「知の協創の世界拠点」にすべく、
強い光を学内外に照射している五神総長。
地球環境ファシリティCEOとして世界を股に活躍している
石井菜穂子さん(本学経済学部卒)とのスペシャル対談や、
「UTokyo Research」による研究紹介原稿、第30代総長を支える理事7人の紹介等を通して、
この6年間の東京大学を牽引する新執行部の横顔を伝えます。
ぜひご一読を!
WEB版の閲覧・冊子版のお取り寄せ方法のご案内はこちらをご覧ください。
女子高生へも工学部の魅力を伝えた高大連携ボーイング講座
東京大学は、2013年より米国The Boeing Company (以下Boeing社)が世界的に展開する教育プログラムBoeing Higher Education Programのサポートを受け、「世界の将来を担うべき優れた科学者・エンジニア」を育成する事業を共同で実施しています。
第5回の今回は「航空工学」をテーマとして開催し、講座には埼玉県立浦和高校、浦和第一女子高校、大宮高校、川越高校、川越女子高校から25名の生徒と10名の先生が参加しました。
この講座の特徴の一つは、一方的に大学のリソースを高校生に提供するのではなく、「工学部についての情報が少ない」、「大学受験がゴールでないことを伝えてほしい」などの高校側の要望も汲み取って講座をデザインしている点にあります。
今回の講座では、本プログラムの代表である鈴木真二教授(航空宇宙工学専攻)による挨拶のあと、Boeing社で航空機開発を行う日本人技術者とスカイプでつなぎ、航空機開発の魅力や海外で仕事をする楽しさ、苦労を語ってもらい質疑応答も行いました。また航空宇宙工学専攻の4つの研究室訪問により「空気力学」「構造と材料」「推進」「制御」の側面から航空機について学びつつ高校の授業とのつながりも知ってもらいました。
その後は高校生が学んだ知識を持ち寄って、ジクソー法による未来の旅客機の提案に取り組みました。航空宇宙工学専攻の学生や先生からアドバイスを受けながら大変ユニークな未来の旅客機が提案されました。
高校生へのアンケートを男女別に集計したところ、工学への関心についての5段階評価では、男子は受講前後の平均値の変化が4.5から4.6だったのに対し、女子は3.8から4.8へと変化しました。受講前に関心が2以下だった女子生徒3名は4又は5へと変化していました。
講座の中で、高校の授業と大学での研究、社会とのつながりを見せることで、工学をより身近で役立つものと感じてもらい、工学部を敬遠している高校生へも魅力を伝えることができました。
政策ビジョン研究センター・政策シンクネット主催「医療分野の研究開発に関する新たな取り組み」開催報告

写真撮影:今 祥雄
開催概要
【日時】 | 2015年8月18日(火)13:30-18:20 (受付開始 13:00) |
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【会場】 | 東京大学本郷キャンパス医学部教育研究棟14階 鉄門記念講堂 地図 |
【言語】 | 日本語・英語(同時通訳あり) |
【主催】 | 東京大学政策ビジョン研究センター (PARI) 政策シンクネット |
【共催】 | 東京大学 Global Leader Program for Social Design and Management (GSDM) 明治大学国際総合研究所 (MIGA) |
東京大学政策ビジョン研究センター・政策シンクネット主催国際シンポジウム「第66回GSDMプラットフォームセミナー 医療分野の研究開発に関する新たな取り組み」は、医療における研究開発の新たな展開と臨床現場での研究開発などについて、その社会的な価値も踏まえながら、これらが医療をよりよいものに変えてゆく可能性について議論を深めるために開かれたものです。日米欧の産業界、大学や研究開発機関などのアカデミア、政府機関から第一人者の方々を交え、医療分野の研究開発に向けた官民協働、リサーチ・インテグリティの確保、さらには研究から実用化までのスピードアップなどについて、グローバルな視野で議論することができました。以下、開催報告として概要を説明します。
会議のプログラム、および当日の発表資料についてはイベント詳細をご覧ください。
開催報告
第1セッション「日本における新たな取り組み」
第1セッションは、医療分野の研究開発について、日本における新たな取り組みを把握し、議論を深めるためのセッションで、4つの基調講演の後、パネルディスカッションを行いました。
基調講演の最初は、末松誠先生(日本医療研究開発機構 理事長)です。末松先生は、「日本医療研究開発機構のミッションと展望」と題して、AMEDの組織とその活動目標の説明に加え、特に重点領域に位置付けられている難病治療のインフラストラクチャー整備等について話されました。
松本洋一郎先生(理化学研究所 理事)は、「基礎研究から臨床研究へ」と題して、日本では臨床研究が比較的少ないこと、日本医療研究開発機構への期待として、治験実施側のネットワークを構築し、効率性、リサーチ・インテグリティ、競争力を強化すること、さらには理研でトランスリレーショナルサイエンスを推進し、日本医療研究開発機構の役割に貢献していくことについて言及しました。
永井良三先生(自治医科大学 学長、政策ビジョン研究センター 顧問)は、「臨床現場での研究開発」と題して、東京大学において今日の「産学連携」が可能となるまでの経緯について、歴史的な観点から議論を起こしたうえで、あらためて橋渡し研究を含む循環型の研究開発の重要性について話されました。
森和彦先生(厚生労働省医薬食品局審査管理課 課長)は、「医療・医薬品行政と研究開発」と題して、医薬品開発に多額の資金が必要になっていることをベースにして、先駆け審査指定制度、クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想、レギュラトリーサイエンス・イニシャティブの3つについて詳しく話されました。
パネルディスカッションでは、パネリストに江崎禎英先生(経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課 課長)と松田譲先生(文部科学省革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)ビジョナリーリーダー、 公益財団法人加藤記念バイオサイエンス振興財団 理事長)を加えて、モデレーターの鈴木寛先生(東京大学公共政策大学院 教授)がリサーチ・インテグリティ、人材育成、難病対策、Under the one roofで産官学の協力、個別化医療などのキーワードで新しい医療が生み出されうる環境の整備について議論が深められました。

第2セッション「臨床研究をめぐる国際的な潮流」
第2セッションは、臨床研究を介して進められる研究開発の国際的な潮流について扱うセッションでした。3つの基調講演を受けて、パネルディスカッションを行いました。
David Epstein 先生(Pharmaceuticals Division Head, Novartis AG)は、「医療活動の変化とイノベーション」と題して、イノベーションの必要性、ノバルティスのイノベーションに対する取組み、デジタル技術の可能性、患者さんのためにという諸点について話されました。
野木森雅郁先生(アステラス製薬 代表取締役会長)は、「オープンイノベーションの加速に向け」と題して、創薬環境が大きく変化しつつあり、単一の企業で完結しない形での創薬のあり方として、創薬連携、オープンイノベーション、新しい産学官連携の必要性であり、官学と業界のそれぞれでそうした試みに向けた取り組みを加速させることへの期待が述べられました。
中尾浩治先生(テルモ 代表取締役会長、一般社団法人医療機器産業連合会 会長)は、「医療機器開発のフロンティア」と題して、医療機器分野が世界的に産業的な成長を遂げていることを述べた上で、さらなる医療機器の特性を踏まえた事業化の必要性とそれを支えるイノベーション教育の重要性について話されました。
パネルディスカッションでは、Bruce Goodwin先生 (President, Janssen Pharmaceutical KK, Vice Chair, PhRMA)に加わっていただき、モデレーターの宮田満先生(日経BP社 特命編集委員)が患者中心の研究開発の在り方や、リサーチ・インテグリティの啓発、産学連携の強化、高齢者医療などの日本のポテンシャルについて議論をリードしました。

第3セッション「全体の総括、今後の展望」
第3セッションは、全体の総括として1つ基調講演の後、パネルディスカッションを行いました。
基調講演して下さったのは、武田俊彦先生(厚生労働省大臣官房審議官(医療保険担当))です。武田先生は、医療分野の研究開発の展望と題して、厚生労働省の中長期的視点に立った社会保障政策、研究開発の促進、保険償還価格におけるイノベーションの評価の3点について話されました。
まとめのパネルディスカッションでは、武田俊彦先生(厚生労働省大臣官房審議官(医療保険担当))、江崎禎英先生(経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課 課長)、鈴木寛先生(東京大学公共政策大学院・教授)、David Epstein先生 (Pharmaceuticals Division Head, Novartis AG)、Bruce Goodwin先生 (President, Janssen Pharmaceutical KK, Vice Chair, PhRMA)、松本洋一郎先生(理化学研究所 理事)をパネリストとしてお招きし、大西昭郎先生(東京大学公共政策大学院 特任教授)と林良造先生(明治大学国際総合研究所 所長)が共同モデレーターを務められました。人口の高齢化や慢性疾患対策の観点に立ったときに、求められる医療、そしてそのための研究開発のあり方は明らかに変容をみせており、それは日本に限らず、世界各国が直面している課題となっています。アンメットメディカルニーズ、ターゲット疾患、予算規模、進捗や成果の管理、人材育成等といった点について、グローバルな枠組みのもとに議論がなされることがますます重要になりつつあるなか、今回のシンポジウムはまさにそのような視点を共有する機会の端緒となったといえるでしょう。

まとめ
産業界、アカデミア、そして研究機関における研究の在り方については、オープンイノベーションや産学連携といったキーワードのもとで、グローバルに新たな展開がはじまりつつあります。日本医療研究開発機構を中心に、さまざまなアクターがそれぞれにインテグリティを保った形で共に研究開発を推進できる環境を整えるとともに、患者本位の研究開発、そしてグローバルな連携のもとでの研究開発の実現に向けてさらに議論を深めて参りたいと思います。

参考リンク
- 東京大学 政策ビジョン研究センター 医療機器の開発に関する政策研究ユニット
- 政策シンクネット
- 東京大学 Global Leader Program for Social Design and Management (GSDM)
- 明治大学国際総合研究所 (MIGA)