三井記念美術館で開催される特別展「東山御物の美―足利将軍家の至宝―」に、史料編纂所で所蔵する『高倉永豊卿記』と「足利義教画像」が出陳されます。このうち『高倉永豊卿記』は学界でもあまり知られておらず、これから読み込まれてゆくことが期待されます。
高倉永豊(一四〇七~七八)は室町時代の貴族で、衣紋の家(宮廷で装束・髪を整えることを家業とする)として足利将軍にも側近く仕えました。その永豊は日記に、洛中で柘榴と柿の文様の「沓形盆」を入手し、同朋衆である相阿弥に見せたところ、良い品なので将軍の「御物」としようと言われた出来事を書き残しています。記事と対応する作品は残っていませんが、この展覧会で陳列される堆朱(ついしゅ)などの彫漆の工芸品と考えられます。足利将軍家のコレクション、いわゆる「東山御物」に関する文献史料はいくつか知られるものの、「御物」が形成される過程そのものを語る記事として貴重です。
『高倉永豊卿記』は、本所教授・榎原雅治が人文社会系研究科日本史学専攻の演習を担当し、四年間かけて大学院生との講読にあたり、先ごろ翻刻を発表しました(*註)。日本史の史料には、存在は知られていても活字化されていないことで、内容まで読まれていないことが少なからずあります。この史料紹介により、本展にとって重要な未知の記事が知られることになり、出陳に至りました。史料の調査・研究・保存は歴史学の基礎であり、学術行政に対応し社会的要請に応じつつも、研究所としての使命を継続すべく、多方面よりのご理解・ご支援を願うところです。
(*註)榎原雅治・木下聡・谷口雄太・堀川康史「『高倉永豊卿記』の翻刻と紹介」(『東京大学日本史学研究室紀要』一八、二〇一四年三月)。原本のカラー画像は史料編纂所「所蔵史料目録データベース」より閲覧できます。
場所:三井記念美術館(日本橋/三越前)
開催期間:2014年10月4日(土)~11月24日(月・振替休)
※展示期間:『高倉永豊卿記』10月4日~11月3日、「足利義教画像」11月11日~24日
高倉永豊(一四〇七~七八)は室町時代の貴族で、衣紋の家(宮廷で装束・髪を整えることを家業とする)として足利将軍にも側近く仕えました。その永豊は日記に、洛中で柘榴と柿の文様の「沓形盆」を入手し、同朋衆である相阿弥に見せたところ、良い品なので将軍の「御物」としようと言われた出来事を書き残しています。記事と対応する作品は残っていませんが、この展覧会で陳列される堆朱(ついしゅ)などの彫漆の工芸品と考えられます。足利将軍家のコレクション、いわゆる「東山御物」に関する文献史料はいくつか知られるものの、「御物」が形成される過程そのものを語る記事として貴重です。
『高倉永豊卿記』は、本所教授・榎原雅治が人文社会系研究科日本史学専攻の演習を担当し、四年間かけて大学院生との講読にあたり、先ごろ翻刻を発表しました(*註)。日本史の史料には、存在は知られていても活字化されていないことで、内容まで読まれていないことが少なからずあります。この史料紹介により、本展にとって重要な未知の記事が知られることになり、出陳に至りました。史料の調査・研究・保存は歴史学の基礎であり、学術行政に対応し社会的要請に応じつつも、研究所としての使命を継続すべく、多方面よりのご理解・ご支援を願うところです。
(*註)榎原雅治・木下聡・谷口雄太・堀川康史「『高倉永豊卿記』の翻刻と紹介」(『東京大学日本史学研究室紀要』一八、二〇一四年三月)。原本のカラー画像は史料編纂所「所蔵史料目録データベース」より閲覧できます。
場所:三井記念美術館(日本橋/三越前)
開催期間:2014年10月4日(土)~11月24日(月・振替休)
※展示期間:『高倉永豊卿記』10月4日~11月3日、「足利義教画像」11月11日~24日